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糖尿病の治療(食事療法/運動療法/薬物療法)

糖尿病の治療


糖尿病の治療は主に食事療法、運動療法、薬物療法の3つに分類され、それぞれにつきまして解説していきます。

 

食事療法


食事療法は糖尿病治療の基本で、栄養バランスを保ちつつ適切なエネルギー量(カロリー)を摂取することが重要です。総エネルギー量の決定方法は以下のとおりです。

 

(1) まず標準体重を、「標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22」で求めます。参考までに身長150cmの人で49.5kg、160cmの人で56.3kg、170cmの人で63.6kg、180cmの人で71.3kgになります。

 

(2) 標準体重を計算しましたら、次に目標摂取エネルギーを計算します。

軽労働者(デスクワーク):25〜30(kcal) × 標準体重(kg)
中労働者(立ち仕事):30〜35(kcal) × 標準体重(kg)
重労働者(力仕事の多い職業):35(kcal) × 標準体重(kg)
肥満者(BMI 25以上):20(kcal) x 標準体重(kg)

 

 

指示されたエネルギー量内で炭水化物、蛋白質、脂質のバランスをとり、ビタミン、ミネラルなど過不足のない状態にすることが重要です。

 

エネルギーの50~60%を炭水化物から摂取し、可能であれば食物繊維が豊富な食物を選択しましょう。タンパク質は標準体重1kgあたり1.0~1.2g(1日約50~80g、エネルギーの約20%)を摂取し、残りを脂質で摂るのが理想的です。

運動療法


運動によって血液中のブドウ糖が消費されるため、血糖値を下げる効果があります。継続的に有酸素運動などを行うことによって内臓脂肪を燃焼させ、筋肉を増やすことによってインスリンが効きやすい(血糖値が下がりやすい)体質になります。

 

運動療法に最適なのは有酸素運動で、歩行、ジョギング、ラジオ体操、水中歩行、サイクリングなどがあります。好みがありますが運動強度や足腰への負担も考慮して選択します。

 

 

運動強度の目安は「心拍数」を参考にするのが効果的です。50歳未満の患者さんは脈拍が120拍/分、50歳以上の患者さんは100拍/分になるくらいが目標です。ペースは週3〜5日以上、時間は内臓脂肪を燃焼させるため30分以上行うことが望ましいです。

 

合併症の程度、心臓・呼吸器疾患などの状態によっては運動療法が望ましくない場合もありますので主治医にご相談の上実施してください。インスリン注射や血糖を下げる飲み薬を使っている場合は運動中・前後に低血糖になりやすいため、ブドウ糖を常に持ち歩いていると安心です。

薬物療法


血糖を速やかにコントロールする必要がある場合や、食事療法、運動療法のみで効果不十分な場合は薬物療法を検討します。

 

 

スルホニル尿素薬(SU薬): 膵臓からのインスリン分泌を増やす薬で従来から使われていた薬です。血糖を下げる力が強い反面、高齢者や腎機能の低下した人では低血糖のリスクが大きく、体重も増えやすくなります。現在では注射剤での治療が困難で、他の内服薬のみでは効果が不十分な際に補助的に使われる場合が多いです。

 

ビグアナイド薬(BG薬): 国内では古くからあるメトホルミンという薬が使われており、インスリン抵抗性を改善してインスリンの効きを良くします。価格が安く効果が期待できるため米国糖尿病学会のガイドラインでは2型糖尿病治療の第一選択とされています。副作用として下痢など消化器症状が出る場合がある他、手術や造影剤検査を行う際は休薬する必要があります。

 

チアゾリジン誘導体: 機序は異なりますがBG薬と同様、インスリンの効きを良くする薬です。副作用として特に心機能の低下した人などで足のむくみが出る場合があり、水分が貯留しやすくなることで体重が増加しやすくなります。BG薬のみで血糖降下作用が不十分な場合に使用されることが多いです。

 

DPP-4阻害薬: GLP-1(インスリン分泌を促すホルモン)を分解する酵素の働きを抑えることでインスリン分泌を増やす薬ですが、SU薬とは違い血糖値に比例して効果が変わるため低血糖を起こしにくく、体重も増えにくい薬剤です。血糖値を上げるホルモン(グルカゴン)を抑制する効果もあります。

 

SGLT-2阻害薬: 尿から糖を排出することで血糖を下げる比較的新しい作用機序の薬剤で、糖質制限食に似た効果が期待でき体重を減らす効果もあります。一部の薬剤では血糖を下げるだけでなく心臓や腎臓を保護する効果も証明されてきています。糖と一緒に水分も出ていくため、服用中は脱水や頻尿などの症状に注意が必要です。

 

 

GLP-1受容体作動薬: DPP-4阻害薬の強化版で、食欲を抑えたり体重を減らす効果もあります。以前は1日1~2回の自己注射するタイプのものが主流でしたが、最近では週1回注射のタイプのものが主流となっており注射頻度が大きく低減されるようになってきました。また現在は飲み薬のタイプのGLP-1受容体作動薬も処方可能となり使いやすくなってきています。

 

インスリン: 飲み薬で血糖管理が難しい方や、インスリンの分泌が大きく減ってしまっている方、妊娠中の方、手術や重症感染症などの切迫した状況ではインスリン治療を行います。インスリンはお腹などの皮下に打ちますが原則自己注射になり、血糖の測定もご自身で行います。短時間ですぐに効果の現れる「速効型」、ゆっくり1日中効果の続く「持効型」などがあり、詳しくは「インスリン療法」の項目で解説します。

 

 

さわやか内科クリニック