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インスリン療法(インスリン注射とインスリンポンプ)

インスリン療法とは、インスリン(血糖値を下げるホルモン)と同じ作用を持つ液状の薬剤を皮膚の下に注射することで、不足しているインスリンの作用を補い血糖値を下げる治療です。薬液の入ったペン型の注入器に針を取り付けて決められたタイミングで毎回注射を行う「ペン型インスリン注射」、ポンプに薬液の入ったをカートリッジ充填して皮膚の下に一定期間留置する針とチューブで繋いだ上で注入を行う「インスリンポンプ」があり、それぞれにつき解説していきます。

 

人間の生理的なインスリンの分泌パターンとして、空腹時も含めて一定のリズムで分泌される「基礎分泌」と、食事の際に一時的に大量に分泌される「追加分泌」があり、特にインスリン分泌が少なくなっている場合はこの生理的な分泌パターンに近づけることで、できるだけ低血糖を起こさない範囲で血糖値を全体的に低下させ、さらに血糖値の波を少なくすることがゴールとなります。

 

※国立国際医療センターのページより引用

 

インスリン製剤は皮下に注射しますが、その吸収速度によって「超速効型」「速効型」「中間型」「持効型」の4つに分類され、効果の速いの成分と持続時間の長い成分が組み合わさった「混合型」「配合製剤」のタイプも存在します。当院ではこの中で超速効型(主に1日3回食前に注射)、持効型(1日1回注射)、配合製剤(主に1日2回食前に注射)を用いる場合が多く、必要に応じて他の注射や飲み薬と組み合わせて治療を行っております。また後述するインスリンポンプでの注入には「超速効型」が用いられます。

 

 

ペン型インスリン注射


ペン型インスリンは下の図のように文字どおりペン型の形をした注入器で、インスリン薬液が初めから充填されており、使い終わったらペンごと破棄する「ディスポーザブル型」と、ペン型注入器にインスリン薬液が入ったカートリッジを充填し、使い終わったら中のカートリッジを交換する「カートリッジ型」があります。当院で新規にインスリン導入する場合は使い勝手の良い前者を処方するケースが多いですが、これまで後者を使われていた方への処方継続およびペン型注入器故障時の交換も可能です。

 

 

その注射方法ですが、(1) ペン型注入器の針装着部位の消毒、(2) 針をペン型注入器に装着、(3) 1~2単位の空打ちを行い空気を抜く、(4) 本来うつ単位数をセットする、(5) 穿刺部位を消毒、(6) 針の付いたペン型注入器を奥まで穿刺、(7) 注入ボタンを最後まで押し込み10秒間待機、(8) ボタンを押したまま針を抜き、使用した針を外して廃棄、の順番に注射を行います。

 

 

注射部位は腹部、上腕部(二の腕)外側、臀部(お尻)、大腿部(太もも)の皮下が良いとされ、この順番にインスリンの吸収速度が速くなります(通常は腹部に注射することが多いです)。

 

 

インスリン治療は血糖を下げる効果が強く、その効き方によっては低血糖のリスクもあるため、原則「血糖自己測定」も行っていただいております。測定のやり方は下の図のように指先を細い針で穿刺して少量の血液を出し、センサーを装着した測定器の先で血液を吸い取ることで数秒で血糖値は表示されます。一般的に70mg/dLを下回っていると低血糖とされ、その場合は速やかなブドウ糖または食事の摂取が望ましいです。

 

 

インスリン治療を行われている方には血糖自己測定器をお貸し出しの上、診察毎に消耗品(センサー、血糖測定用の針、消毒綿)を院内でお渡しします(インスリン薬液とインスリンの針は処方箋を発行の上、調剤薬局にてお渡しします)。最近では腕にセンサーを装着し(最大2週間まで装着可)、任意のタイミングで血糖を測定できるタイプの血糖測定器も取り扱っておりますので、ご相談も可能です。

 

 

インスリンポンプ


インスリンポンプ治療ではインスリンのカートリッジを内蔵したポンプからチューブを介して皮下に埋め込んでいる針(3日毎前後でご自身で交換します)からインスリンを注入します。ペン型インスリンでは1回の注射毎に単位数を設定しますが、インスリンポンプでは時間毎にインスリン注入速度を設定しておくことが可能で(ベーサル注入)、食事を摂る場合などに、手動でインスリンを注入できます(ボーラス注入)。これらの機能により、ペン型インスリン注射よりもよりきめ細かい血糖管理が可能となります。

 

 

また最近の機種ではポンプ本体と皮下のグルコース濃度を測定するセンサーが連携して低血糖時に注入をストップしたり、注入速度を自動制御する機能がついている場合もあります。グルコース測定機能のあるインスリンポンプ(SAP)では皮下間質液中のグルコース濃度を測定しているため、頻繁な校正が必要となり原則として指先等での血糖自己測定を一定の頻度で併用する必要があります。

 

 

インスリンポンプ本体はクリニックからお貸しする形となり、ポンプに用いる超速効型インスリン薬液は処方箋で、それ以外の消耗品につきましてはクリニックでの診察時にお渡ししています。またチューブの詰まりや機械の故障など何らかの問題でインスリンが注入できなくなった際は、ペン型インスリンに切り替えて注射する必要があり、ある程度のペン型製剤のストックをお持ちいただいております。

 

 

当院では、以下のインスリンポンプに対応しております。

 

メドトロニック社 ミニメド™ 770Gシステム

テルモ社 メディセーフウィズ

 

詳細につきましてはリンク先の各メーカーサイトをご覧ください。

 

 

さわやか内科クリニック