当院では、肥満症、睡眠時無呼吸症候群(SAS)、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に対する保険診療(GLP-1受容体作動薬による治療)に対応いたします。
I.肥満症に対する治療

[対象]
肥満症に対する保険診療では使用できる薬剤として「ウゴービ」と「ゼップバウンド」があり、基本的に下記の条件を満たす必要があります。
– BMI 27以上で肥満関連健康障害が2つ以上、またはBMI 35以上。
– 計画に基づく食事療法・運動療法を6か月以上行っても効果不十分。
– 管理栄養士による栄養指導を2か月に1回以上受けている。
– 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のうち少なくとも1疾患に薬物療法が行われている。
※肥満関連健康障害には、上記3疾患に加えて下記の疾患群が含まれます。
高尿酸血症(痛風)
冠動脈疾患
脳梗塞
脂肪性肝疾患
月経異常・不妊
睡眠時無呼吸症候群
運動器疾患
肥満関連腎臓病
[治療効果]
食欲や満腹感に作用し、食事量の調整を助けることで減量を促します。臨床試験では、薬剤群・プラセボ群の両方で生活習慣への介入が行われています。
| 試験 | 対象・期間 | 薬剤群の平均体重変化 | プラセボ群 |
|---|---|---|---|
| STEP 6[1] | 日本・韓国の肥満患者401人。2型糖尿病患者を含む。68週 | セマグルチド2.4mg:−13.2% | −2.1% |
| SURMOUNT-J[2] | 糖尿病のない日本人肥満症患者。主解析225人。72週 | チルゼパチド10mg:−17.8%、15mg:−22.7% | −1.7% |
[2]Kadowaki T, et al. SURMOUNT-J:日本人肥満症患者におけるチルゼパチドの有効性・安全性. Lancet Diabetes Endocrinol. 2025;13:384–396. doi:10.1016/S2213-8587(24)00377-2
体重以外の臨床的利益として、SELECT試験[3]では、心血管疾患の既往があり、糖尿病のない過体重・肥満患者において、セマグルチドが心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合イベントを減少させました。発生割合は6.5%対8.0%、ハザード比0.80でした。
[3]Lincoff AM, et al. SELECT:Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes. N Engl J Med. 2023;389:2221–2232. doi:10.1056/NEJMoa2307563
[治療の流れ]
1. 初診・適応評価
BMI、体重の推移、合併症、服薬、食生活、過去の減量歴などを確認します。
2. 6か月以上の食事・運動療法
管理栄養士による栄養指導を並行して続けます。
3. 効果不十分なら薬剤を導入
最初は少量から開始し、約1カ月毎に状態を確認の上徐々に増量していきます。
4. 効果・副作用を評価
導入後は毎月、体重や代謝指標を確認します。
5. 終了後も体重管理を継続
投与期間は薬剤により最大68~72週となっております。
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II.睡眠時無呼吸症候群に対する治療

[対象]
肥満を伴う中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群はゼップバウンドの治療適応となり、主な条件は次のとおりです。
– BMI27以上
– 精密検査でAHI15回/時以上、または簡易検査では30回/時以上を基準とする。
– 処方施設で原則3か月以上、食事・運動療法を行っても減量効果不十分。
– その間に管理栄養士による栄養指導を少なくとも1回受けている。
心不全、または一定条件の肥満低換気症候群があり、早期導入が必要と判断される場合には3か月を待たず治療開始となる場合があります。
[治療効果]
SURMOUNT-OSA試験[4]では、肥満を伴う中等症~重症OSAS患者を対象に、チルゼパチド(ゼップバウンド)10mgまたは15mgを52週間投与しました。
なお「AHI」とは「睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数」です。
| 52週時点のAHI変化 | チルゼパチド | プラセボ | 群間差 |
|---|---|---|---|
| CPAPを使用していない患者 | −25.3回/時 | −5.3回/時 | −20.0回/時 |
| CPAPを使用している患者 | −29.3回/時 | −5.5回/時 | −23.8回/時 |
開始時の平均AHIは約50回/時、平均BMIは約39でした。AHIに加えて、体重、夜間の低酸素負荷、収縮期血圧、睡眠関連の患者報告指標も改善しました。
[4]Malhotra A, et al. SURMOUNT-OSA:Tirzepatide for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Obesity. N Engl J Med. 2024;391:1193–1205. doi:10.1056/NEJMoa2404881一方この試験はCPAPとの優劣や、CPAPを安全に中止できることを証明した試験ではありません。
[治療の流れ]
1. 睡眠検査と肥満の評価
閉塞性かどうか、重症度、BMI、日中の眠気、現在のCPAP治療などを確認します。
2. 標準治療と減量指導
必要なCPAP等を継続し、原則3か月以上の食事・運動療法を実施します。
3. 薬剤導入
最初は少量から開始し、約1カ月毎に状態を確認の上徐々に増量していきます。
4. 体重と睡眠障害を別々に評価
3~4か月で減量傾向がなければ中止。導入6~7か月を目安に精密検査(PSG)を行い、SASに改善傾向がなければ中止します。
5. 最大52週で終了し、その後も経過観察
投与中は2か月に1回以上の管理栄養士による指導を継続します。
III.MASHに対する治療
[対象]
MASHは、脂肪の蓄積に加え肝臓に炎症や肝細胞障害を伴う病態です。肝硬変を伴わず、中等度の肝線維化がある方がウゴービによる治療の適応となります。
– 肝生検または肝硬度測定や血液検査などの非侵襲的検査(NIT)にて中等度の線維化(F2・F3)認め、肝炎所見を専門医が総合判断します。
– BMI19以上
[治療効果]
ESSENCE試験[5]では、生検で確認したF2・F3のMASH患者にセマグルチド(ウゴービ)2.4mgまたはプラセボを投与しました。最初の800人を対象とした72週時点の解析結果は以下で、両評価項目で有意差が認められました。
| 肝生検による評価項目 | セマグルチド | プラセボ |
|---|---|---|
| 線維化を悪化させずにMASHが消失 | 62.9% | 34.3% |
| MASHを悪化させずに線維化が1段階以上改善 | 36.8% | 22.4% |
ここでの「MASH消失」とは肝生検上の炎症・肝細胞障害が一定の基準を満たさなくなったという意味で、脂肪肝や線維化がすべて消失したり肝臓が完全に正常化したという意味ではありません。また現時点で確立しているのは主に肝組織所見の改善で、肝硬変への進行、肝不全、肝がん、肝疾患による死亡を減らす効果はまだ検証段階です。
[治療の流れ]
1. 脂肪肝・肝障害のスクリーニング 飲酒歴、薬剤、他の肝疾患、AST・ALT・血小板、FIB-4、腹部エコーなどを評価します。
2. 専門医と連携して線維化を評価 生検またはNITを用いて線維化の程度を判断します。
3. 薬剤導入 最初は少量から開始し、約1カ月毎に状態を確認の上徐々に増量していきます。
4. 早期の反応と副作用を確認 肝酵素、体重、血糖などを追跡し、改善傾向を認めるかを確認します。
5. 約12か月で肝臓を再評価 生検またはNITで確認し改善の程度を確認し中止か継続を判断します。継続時は約12か月毎に再評価します。
各疾患の効果、治療の流れは以上となります。健診・検査などで異常を指摘された場合や、当てはまる症状のある方は当院までご相談ください。
さわやか内科クリニック
愛知県知立市谷田町西1-14-4
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